とにかく来場してもらいたい

私が住宅展示場での企画担当を任じられたのは、世界同時不況の煽りで住宅展示場への来客が減少傾向にあった昨秋のことです。既に、ほとんどのお客様が不況に敏感になっていらっしゃり、購入に結びつきそうなお客様でさえ態度が硬化しているように感じていました。
そこで私たち住宅メーカーとして、長いスパンでお客様と関係を築いていく前提でのアプローチも強化することにし、具体的には、「3~7年以内に家を建てたい」とお考えの方々を明確なターゲット化することにしました。
まずは、年明けに新春イベントが開催されることが決定していましたので、このイベントが試金石となります。 今までの当社の企画は、売上に結びつきやすいお客様に重点を置いていましたので、既存企画を練り直すところから始めました。営業マンとも情報交換しながら、マイホームをお客様の夢としていただくためのアイデアを形にしていきました。
とにかく来場してもらいたい、その一心で企画チーム一丸となったおかげだと思います。企画案は順調に進みましたが、今度は、別の面での不安が大きくなっていきました。
長期間、お客様のところに居座り続けるDM

ターゲットのためのベストな企画があっても、来場していただけなければ意味がありません。ターゲットにこのイベントを認知してもらい、来場していただけるのか。私たちはターゲットを呼び込むためのアプローチのことまで考えが及んでいませんでした。
今までのターゲットと違うのに、アプローチの手段は、新聞広告や折り込みチラシ、ポスティング、住宅情報誌のままで、何も変更しないことになっていました。
そもそも、今の時点で具体的にお考えでないお客様に、これらの媒体はほとんど効き目がないことが分かっています。どのようにして私たちからのメッセージをお届けするのか、すぐに答えが見つからず、不安が大きくなっていきました。
私たちのターゲットは、今はマイホームには関心があるが具体的なアクションを起こそうとしているわけではありません。チラシや住宅情報誌はスルーされ、ゴミ箱に一直線となるはずです。捨てられないメッセージ、長期間、お客様のところに居座り続けられるメッセージとなると、既存の媒体では実現がとても難しく、全くいいアイデアが思いつきませんでした。
そんなときに、チームのあるスタッフのご両親に届いた1通の年賀状が寄せられました。
抽選日まで捨てられない

それは、家電量販店の年賀状で、官製葉書なのにどういうわけか圧着ハガキになっており、広い紙面で、圧着部分を開くと、たくさんの特売品が掲載されているものでした。
これを手にしたときに、ピピッときました。
「こいつは抽選日まで捨てられない、長くお客様のところに居座り続けるメッセージだ。」
すぐにこの葉書の調査を始めると、出てきたのが「あけて広がる年賀状」というものでした。
早速、企画会議に取り上げ、チームで検討しました。郵便局で売っている年賀葉書がベースなので、「お年玉くじ」がついており、抽選日までは捨てられません。また、年賀状は返事を書いたり、連絡を取りあったりするために、何度も見返すことが多く、折に触れて目に留まるものです。さらに「あけて広がる年賀状」なら、普通の年賀葉書の3倍の紙面があるので、特典満載のイベント内容を伝えやすいですし、圧着ハガキの開封する楽しみも魅力的です。これはまさに私たちが探し求めていたそのもので、チーム全員が賛同し、使うことになりました。
結局、企画会議で出た他のアイデアを含め、合計3種類の新たなアプローチ方法が採用になる一方で、従来のターゲット層へのアプローチ手段であるポスティングは廃止することになりました。
私たちが使いたかったメディアが見つかりました
既存のアプローチ方法がマンネリ化した中で、「あけて広がる年賀状」は、全く新しいPR方法でした。新年のご挨拶という特別感も自然と演出でき、会社のイメージアップにもつながったように思います。私たちが使いたかったメディアが見つかり、企画担当者としてはとても満足のいく結果が得られました。